最新のがん統計によると、国内で一年間に「膵臓がん」と診断される患者数は約4万4000人であるのに対して、死亡者数は約3万8000人と報告されています (国立がん研究センターがん情報サービスより)。
それらの数字にそれほど開きがないことが意味するのは、いかに膵臓がんが難治性であるかを物語っています。日本人の膵臓がんは、欧米先進諸国と比較しても、実はもっとも急ピッチに罹患数も死亡数も右肩上がりで増えていることをご存じでしょうか。
2021年の国内がん死亡者数の順位をみてみると、男性では4位、女性では3位が膵臓がんであることもあまり知られていません。
かつては他人事であった深刻な病気が、今では身近なリスクとなりつつあるわけです。だからこそ、理想的にはがんが発生してくる膵管の上皮内にとどまっている本当に早期の段階 (ステージ0) で発見したいところです。ところが、胃や大腸であれば、内視鏡検査でがんの発生母地を正確に直接観察できるわけですが、膵臓がんが発生してくる 2mm 程度の膵管の中を同じように検査をすることは不可能であり、日頃から膵臓自体に焦点をあてた検査を受ける機会もほとんどないため、どうしても症状が出現してからの “後手の発見” になってしまうもどかしさがあります。
昨今、血液一滴や尿一滴 (マイクロRNAや線虫など) で手軽な膵臓がん検診を謳っているビジネスが横行しているようですが、まだまだ科学的に信頼できるものではなく、うまい秘訣などは現状存在していません。とりわけ、膵臓疾患は総合的アプローチによってまじめに調べられるべき病態です。
当クリニックの膵臓がん検診の具体的な取組としては、血液検査で膵酵素であるアミラーゼ・リパーゼ・トリプシン・エラスターゼ1や、腫瘍マーカーである CEA・CA19-9・Dupan-2・Span-1 を全てチェックし、学術、経験豊富な専門医による腹部超音波(エコー)検査で膵臓を重点的に観察いたします。さらに、膵臓がんが発生する膵管の形態や膵実質に異常がないか、微小な病変がないかを、医療被曝の少ない高精細 3.0テスラ 腹部MRI と 胆管膵管造影検査(MRCP)で精密な診断に努めています。
膵臓がんは症状が出て発見された時点で、ほぼ進行がん状態ですので、当院では膵臓がんリスクをいかにして拾い上げ、できるだけ早期に診断できる質の高い診療を日々、実践しています。
消化器内科・外科(がん)