東京目白クリニックのがん治療専門外来
膵臓がん治療専門外来
膵臓は主に3つの部位(頭部、体部、尾部)に分けられ、解剖学的な特徴として重要血管や神経叢に囲まれている臓器です。膵臓がんが厄介なのは、容易に膵臓の外に向かって浸潤する性格を有し、がんが占拠する部位によって広がり方が異なってくるからです。
上腸間膜静脈 SMVや門脈 PV、上腸管膜動脈 SMAや腹腔動脈 CA、総肝動脈 CHAへの浸潤有無や程度によって、「切除可能 R」、「切除可能境界 (ボーダーライン) BR」、「切除不能 UR」に分けて診断されます。また、「ボーダーライン」には、門脈系のみに浸潤があるBR-PV、動脈系まで浸潤があるBR-Aと表現され手術方法 (術式) に大きな影響があります。また、遠隔臓器に転移がなくても局所での進行が強くて切除不能なステージⅢの場合、UR-LAと表現されます。一方で、遠隔臓器に転移がある場合、ステージⅣ (UR-M) と診断されます。
これらの判断には、内科、外科、放射線科ら多職種によるチーム医療が不可欠であり、切除可能か否か、ボーダーラインでも切除が見込めるのかの診断基準は施設間格差が大きいといえるでしょう。また、テクニカルな「切除可能」でも腫瘍マーカーCA19-9高値や腫瘍径が大きいオンコロジカルな「ボーダーライン」もあり、それぞれにおいて治療戦術・治療戦略が異なってきます。
知られているように膵臓がんは早期のうちに発見されることが少なく、多くは症状を有して発見される浸潤性の場合がほとんどです。
現状、ステージⅠ以上で診断される膵臓がんに対して、「いきなり手術」はすでに旧い治療体系でなんらかの形で化学療法 (抗がん剤治療) が導入される時代に突入しています。「切除可能」には術前補助化学療法、「ボーダーライン」に対してはより強度をあげた化学療法、「切除不能」には化学療法もしくは化学放射線療法が推奨されます。
昨今の抗がん剤治療の進歩や個別化がんゲノム診療が功を奏して、「ボーダーライン」や「切除不能」の膵臓がんが「切除可能」へと転向できる、いわゆるコンバージョン症例も増えてきていますので、漫然と抗がん剤治療を行うのではなく、’切除可能性’ について逐次的な再評価が重要となってきます。
一方で、いくら化学療法 (抗がん剤治療) が進歩しているとはいえ、治療成績が劇的に改善されているわけではなく、現状「難治がん」であることには変わりありません。だからこそ、治癒を目指した主軸となる手術は高度技能専門医の多くいる手術症例の多いセンター施設で行われるべきです。
東京目白クリニックは、国内のエキスパート外科医らと密に連携をとりながら、あきらめない治療戦略のもと、高度な膵臓がん治療を安全に実践しています。
【当クリニックで頻用される治療レジメン】
□modified FOLFIRINOX (mFOLFIRINOX) モディファイド・フォルフィリノックス療法
- オキサリプラチン85mg/m2 点滴静注 (120分)
- イリノテカン 150mg/ m2 点滴静注 (90分)
- レボホリナート 200mg/ m2 点滴静注 (120分)
- フルオロウラシル 2400mg/ m2 持続点滴静注 (46時間)
1サイクル期間:14日間
□GEM+nabPTX ゲムシタビン+ナブパクリタキセル 療法
- ゲムシタビン1000mg/m2 点滴静注 day1, day8, day15
- ナブパクリタキセル 125mg/m2 点滴静注 day1, day8, day15
1コース期間 :28日間 4週目休薬
□nal-IRI+5-FU ナノリポソーム型イリノテカン (ナルイリノテカン)+フルオロシル+レボホリナート療法
- ナルイリノテカン70mg/m2 点滴静注 (90分)
- レボホリナート 200mg/ m2 点滴静注 (120分)
- フルオロウラシル 2400mg/ m2 持続点滴静注 (46時間)
1サイクル期間 :14日間
注:UGT1A1*6もしくは*28のホモ接合体、UGT1A1*6および*28のヘテロ接合体を有する患者さんでは、1段階減量を検討
胆道がん治療専門外来
ひと言で胆道がんとは言いましても、ほかのがん腫とは異なり疾患のバリエーションが多いのが特徴です。具体的には、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がん、胆嚢がん、十二指腸乳頭部がん、そして肝内胆管がんです。
遠隔転移がない場合、治癒を念頭に置いて治療されるべきなのですが、主軸治療となる手術レベルの施設間・医師間の格差が非常に大きいため、治療方針の標準化が難しいのが胆道がんです。
さらに、胆汁の通り道である胆管という場から発生するがんであるため、胆管炎や黄疸に対する胆道ドレナージという術が迅速に行き届く医療環境も当然ながら必要です。
それらをふまえたうえで、腫瘍因子として、高度な局所進展と領域リンパ節転移のないステージⅢまでの場合、切除可能であれば高度技能専門医の多くいる手術症例の多いセンター施設で手術が行われるべきです。
胆道がんに対する術前化学療法 (ネオアジュバント) の有用性を示した明確なエビデンスはありませんが、進行した胆道がんは腫瘍の進展範囲が不明なケースが多く、手術後の再発リスクも非常に高いため、術前化学療法という戦略が必要と考えます。
また、計画的な術前化学療法ではなくても、化学療法 (抗がん剤治療) によって「切除可能」へと転向できる、いわゆるコンバージョン症例も増えてきていますので、東京目白クリニックは、国内のエキスパート外科医らと密に連携をとりながら、高度な胆道がん治療を安全に実践しています。
遠隔転移のあるステージⅣの場合、あるいは局所進展が強い、高度な領域リンパ節転移を伴う場合には化学療法 (抗がん剤治療) が必要になってきます。
もちろん、胆道ドレナージや胆管ステントによって、胆道感染リスクのコントロールも必須です。抗がん剤治療中に胆道閉塞や胆管炎の再燃も多いため、質の高い内視鏡的処置が迅速に施すことが可能なエキスパート胆膵内科とのチーム連携も不可欠となってきます。
そして、これらの場合にも常に「治癒」のチャンスを念頭に置きながら、漫然とした抗がん剤治療ではなくエキスパート外科医との密な連携をとりながら、手術のチャンスを常に目指しながら安全かつ高度な抗がん剤治療を実践しています。
また、がんゲノム医療の進歩により、胆道の部位毎に特徴的な遺伝子異常の発現があることがわかってきています。
例えば、肝内胆管癌では線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)2 融合遺伝子異常、IDH1/2 変異、胆囊癌ではERBB2 増幅、肝外胆管癌ではBRCA変異などです。
東京目白クリニックでは、積極的な「がん個別化医療」にも取り組んでいます。
【当クリニックで頻用される治療レジメン】
□GC (ゲムシタビン+シスプラチン) +デュルバルマブ療法
- ゲムシタビン1000mg/m2 点滴静注 day1, day8
- シスプラチン 25mg/m2 点滴静注 day1, day8
- 免疫チェックポイント阻害薬
デュルバルマブ(抗PD-L1抗体薬) 1500mg/回 点滴静注 day1
1コース期間:21日間
□GCS (ゲムシタビン+シスプラチン+S-1) 療法
- ゲムシタビン1000mg/m2 点滴静注 day1
- シスプラチン 25mg/m2 点滴静注 day1
- S-1 体表面積に準じた投与量 1日2回 (朝・夕食後) 経口 day1-7
1サイクル期間:14日間
転移・再発大腸がん (主に大腸がん肝転移) 治療専門外来
ステージⅣでも治癒ポテンシャルのある大腸がん肝転移
昨今の著しい抗がん剤治療の進歩に併せて、診療ガイドラインの普及や副作用対策(支持療法)の進歩もあり、最善治療の標準化が進んでいることはとても喜ばしいことです。
一方で、抗がん剤治療はがん患者さんをマネジメントする手段のひとつであり、それが目的化されすぎることで、個々の患者さんの治癒ポテンシャルを奪ってしまうケースも少なくありません。その代表的な疾患としてあげられるのが転移性大腸がんです。
転移・再発の5割以上のケースで肝臓に病巣がみられるのですが、他のがんの転移であれば、治療の目的は緩和的な意味合いとなることが多いかもしれません。しかしながら、大腸がん肝転移の場合、その治療戦術・治療戦略はまったく異なってきます。手術の介入によって、治癒ポテンシャルを有する疾患です。
さらには、大場院長の英語論文業績ですが、肝切除後に高い再発リスクはあるものの、それが再度切除することが可能であれば、治癒ポテンシャルは失われないままであることを示したエビデンスがあります(Surgery 2016; 159: 632-40)。
昨今、さまざまなバイオマーカーの登場やがんゲノム診療の普及などによって、盛んに「個別化」「プレシジョンメディシン」と称される医療がもてはやされていますが、一人でも多くの治癒ポテンシャルを有する大腸がん患者さんを見逃さない努力も、重要な個別化医療のひとつであると考えます。
それを可能にするのは、決して、一つの診療科、一人の主治医のみで大腸がん患者さんを抱え込むのではなく、肝臓外科医、呼吸器外科医などを交えた多職種連携によるチーム医(multidisciplinary team; MDT)が必要となってきます。
ある地域がんセンター病院で「もう治せませんよ」という診断のもとで漫然と抗がん剤治療を受けていた、大腸がん肝転移の患者さんのCT画像を、世界中のエキスパート肝臓外科医にみせたところ、実に6割以上の患者さんが、手術できるポテンシャルがあったという結果も報告されています(Br J Sur 2012; 50: 1590-601)。
国内においても、地域や病院が違えば、程度の差はあれ、それに似た状況があるような気がします。本当は治せたはずだったのに、身近な主治医の独断で治らない大腸がんになってしまっている可能性が少なくありません。
この話は何も大腸がんに限った話ではなく、進歩した有効性の高い抗がん剤治療の登場によって、他のがん腫でも同様な場面が増えてきています。
再発してもあきらめてはいけない大腸がん
大腸がんは再発しても治せるポテンシャルがあります。
一般論でいうと、がんの再発とは、治ることから遠ざかる不運な出来事です。そして、最初にいくらベストが尽くされたとしても、どんなに優れた外科医に手術をしてもらっても、再発してしまうことは時折みられます。
再発リスクが高いとわかっている場合には、手術の前もしくは後(周術期)に、抗がん剤治療を行うことが推奨されます。このような抗がん剤治療のことを 「補助化学療法」と呼びます。
要するに、再発リスクをできるだけ減らすことで、治癒する確度をより高める戦略の一つだといえるでしょう。
ところが、例外的な疾患もあります。とくに大腸がんの場合がそうです。
現在、大腸がんの罹患数は、国内で年間15万5000人以上、男女合わせた全体で1位となっています(国立がん研究センターがん情報サービス)。
また、女性の場合、死因の1位のがんであることがあまり認識されていないようです。
実は進行したステージⅢの大腸がんでもしっかり手術を行えば10年生存率が70%を越えている予後が比較的良いがん疾患だといえます。
それにもかかわらず、なぜ死亡数が年次推移でみると増え続けているのでしょうか。カギは、転移しやすい臓器が肝臓であること、ステージⅣでも治るチャンスがあるにもかかわらず、治療戦略が病院や医師によって大きな格差があることが挙げられます。
不思議なことに、大腸がんは、なぜか肝臓を好んで転移しやすい特徴があります。次いで肺にもしばしば転移します。
しかし、だからといって決してあきらめてはいけません。再発しても切除が可能であれば、何度も「治癒のチャンス」があるということです。
このような大腸がんのふるまいを知らない医師は意外と多いのです。そのため、手術で治せるかもしれない転移なのに、「もう治らない」からと漫然と抗がん剤が投与され続け、治せるチャンスが主治医によって奪われている患者さんが世の中にはたくさんいらっしゃいます。
ちなみに、大場院長が東京大学医学部附属病院に勤務していたとき、過去17年間に大腸がん肝転移の手術を受けた371人の患者さんのデータを解析したところ、5年生存率は54%、10年生存率は41%でした(Ann Surg Oncol 2014; 21: 1817-24)。
そして、ぜひ知っていただきたいことは、大腸がん肝転移の手術後にも再発してしまうことはしばしばあります。同じ肝臓の場合もありますし、肺やその他の部位に再発することもあるでしょう。
それでも、再発したら終わりではありません。繰り返し手術が可能だった患者さんが全体のなかで半数もいらっしゃるという事実です。
そのようにがんと前向きに、その都度、繰り返し手術が可能であれば、最終的に4~5割の患者さんは本当に治っていくのです。もし大腸がんが転移してしまったとしても、個別のケースにもよりますが、治るチャンスを絶対にあきらめてはいけないと繰り返し申し上げておきます。
以下は、転移性大腸がんを治すための3つの必須ポイントとなります。
東京目白クリニックでは、ステージⅣでもあきらめない大腸がん治療戦略を日々実践しています。
- 専門的な抗がん剤治療(化学療法)を、安全かつ有効に組み合わせること。
- エキスパート肝臓外科医もしくは呼吸器外科医との密な連携が必要。
- 一度の肝切除や肺切除で解決しないことがしばしばあるため、再発しても決してあきらめないこと。