抗がん剤 「5-FU」 注射薬をどうしても卸すことが不可能だと協和キリン営業所 所長が謝罪に来られました。アブラキサン問題で、膵がん患者さんにとって重要な治療法をひとつ失い、代替治療として FOLFIRINOX や オニバイド療法 を予定していた患者さんが標準治療を受けられないことになります。これが意味するのは、根拠あるすべての最善治療が、メーカー側の不都合、国内製薬業界の不都合によって受けられないということです。こうした事態は倫理的に許されるものでしょうか。どうやら、シェアを独占していた唯一の後発品 (ジェネリック) を扱う東和薬品が、急遽、供給制限をかけたことが発端のようですが、患者さんに向けた透明性のある情報提供をいまだになにも行っていません。膵がん患者さんのみの話ではありません。5-FU を失うことで、胃がん、大腸がん患者さんにとって FOLFOX 療法やFOLFIRI 療法を失うことにもなります。他がん腫でも、5-FUを軸とした重要な治療法があります。一刻も早く、国内製薬業界にある諸所の問題を解決し、患者さんに迷惑がかからないよう努めていただきたいと思います。
消化器内科・外科(がん)